花も嵐も同義のおまえは真新しい獣
わたしが黙したココシャネルの心臓
光よりも天使を信じるよりもはやく
やらかにばら撒くポワソンダブリル
ママはピンク・グレープ・フルーツ
お気に入りの神罰を身に纏う真夜中
蟲毒めいたシュガー・ポットの中で
棲まうにゃ最高のフレンチトースト
うまれたときにまぶたは捨て去りて
屍櫃に寄生するすべての炎に告げる


おなかの中にモネの緑の庭を飼えば
鏡文字の残骸を集めればきみと成す
けむくじゃらにはオスもメスもない
指先の前世を知っていると微笑んだ
まどろみと記念日が四肢を持つ国で
天魔も火の粉も引き千切って君臨す
オランジュとショコラのキマイラね
たったそれっぽっちの雛罌粟でいい
まぼろしと思わずどうか形見にして
救済からはほど遠い場所で俟ってる
ミラージュもマリアージュも舐めた
午后でいちばん美しい和毛をあげる
爛漫さえも簡単に切り裂ける化け物
バスタブいっぱいに集めた革命前夜
透明になるほど極彩に近づく首筋よ
そうして熔けちゃうトワ・エ・モア
生命に理由なんてものないと言って
キラキラとギラギラの狭間で愛して
健気って言葉が潰れ消えますように
逆さまに揺れるキューピッドの肺腑


あさきゆめみし春のうろに目眩する
東雲のくちびるに翳すは正しい歪み
なごり雪に身を濡らせば恋がごとく
撃てない弾も堕ちない鳥もないから
音を立てずに海へと遂げる花束たち
血筋を辿れば暗夜の淵に座すまぶた
瑕疵も残さぬ呪縛めいた五分前の頬
子午線を燃やせどもきみに敵わない
あなたにしかわからない雷が鳴れば
リボンや金糸を解くための雨が降る
うぐいすの肉を使えども餡じゃない
薔薇よりも幸いのいきもので在った
まばたきのたびに昼も夜もなくなる
この世すべての眩しさを喰らう五指
色彩を殺すなにもかもであってくれ
甘くて苦い象りを天啓と呼ぶ暮夜に
火がなくちゃなんにもできないの?
ぼくらは寝癖をつけたズーノーシス
どんなたらればもゆるしてあげるよ
何者にもなれない代わりに花を買う

さざめくほどの秘密を持たない祈り
原罪さえをも冠にしてしまえる一片
あれもこれもどれもそれも後の祭り
虹となる前にやらなくちゃいけない
おはようもおやすみもてのひらの上
花が散ったら拐かせなくなっちゃう
ひと粒かぎりサン・ゴーズ・ダウン
一夜じゃ足りない足りなくなくない
なけなしの罪で敷く獣道にくちづけ
おへそのかたちは嘘を吐けないもの
メロン・クリームソーダのシナプス
蝶々よりも軽く御胸よりも狭い乖離
神さまのやるせなさを掬い取る薬指
持て余す天地創造を橄欖石になおす
病めるほどの真紅を飲み干してくれ
どこよりもやさしく気まぐれな濁り
ハートマークの真ん中を抉り取って
星明かりぐらいがちょうどいい地獄
上目遣いに箔押しされた世界の片隅
喩えば林檎にも蛇にもなれようとも


所詮ただの血肉のためのラブソング
執着も終着も必要ないと信じる暁天
点線と結び目のにおいを憶えている
間違い探しで消えてしまった夕暮れ
フェアリーテイルの切れ端のサラダ
熱いも冷たいも意のままにマカロニ
むずかしさをひた守るひらがなの羽
スカートの裾に織り込む焦げた一篇
ほんとうの嘘で涯てさえも弄んでよ
世界でいちばんかわいい戦場であれ
古ぼけた行間に夢のような独占欲を
あえやかな衝動を奔らせるまなじり
朝に摘んだばかりの孤独をもぎ砕く
ふんわりたまごでくるんだグリモワ
希釈された言語の行く末を諳んじろ
鍵穴の中に蔓延るラヴィアンローズ
とつくにの陰や日なたを孕みながら
カプリシューのシュークリームたち
彼方か火傷か泪のように光り輝いて
わたしをきれいだと言っていいから


エバーグリーンに潜む劣等を抱いて
欲しいものはみんな刹那を謳う雨後
さびしさをさびしさで埋むさびしさ
呪詛のようにぼくの体温を縛る輪郭
砂糖菓子が齎す暗がりを弓矢にして
空白に眠れない星の子を填め込めば
揺蕩うことを良しとしないでほしい
カフェ・オレに浮かぶアポカリプス
瞬く間に燃えて沈んで弧を描く庭園
あなたのためのリップノイズだった