Haute couture October.
あの海の色になる頃
いとも容易くまぶたを降ろす
ゆるやかな剥奪とともに
砂粒を数えて待っているから
むらさきのにおいに満つ
きわどい幸福
どこに伝えられぬ愛でもいい
五分前から抱きしめていた
再生できない五指
むずかしい花束はいらない
このまばたきはあなたのもの
灰になるための針と糸
なんでもない淵に頬杖ついて
綻びばかりが集まる港町
Love me Tenderと呼ばないで
てのひらに溢れている
やわらかくて生っちろい嵐
世界の終わりにイエスと言う
軈て何処かでくちづけて
きみに這いずる逆光
止め処なくキラキラしていたい
秒針の隙間に飼う横顔
花がぼやかしたくちびる
目覚めなくても間違いでも物語

stay with meに火をつけて
あわいに群れるひかり
ドグラの鼓動とマグラの心臓
沁みついたほのかが騒ぐ夜
なけなしの不等号
どこもかしこも痛いパレード
ゆえにto be Seaside.
春になれない血を撫ぜて
あまねくすべての椅子にいない
call my Honey and Spit.
おまえの皮下で遭う渦
うしろ手に隠した逆らいの星
やさしい音沙汰
舌の根をくすぐる幽霊
ひとたびも残さず問いかけて
あなたの柩の蓋になる
ほんとうの目眩を教えてあげる
薬指の長さも知らぬまま
鍵穴から響く十全
ふたり揃いの牙の模様
触れる手前でいつも膨らむ
降りしきる朝ぼらけ
昨日を引っ掻き今日を苛み明日は
忘却の涯てに棲む生類
閉ざされたかたちを慈しんで

トーストの焦げた部分をあげる
そうして揺らめく未必
どんなに欠けても駆けてゆく
永日に重なる傷痕
そんな遊泳を纏わないで
おしゃべりな変容をはじめよう
ゆっくりと吐き出す機微
奇形の怜悧
ちいさく滲んだ化け物
どこか遠くより悲しみの汀
密やかに薄くなる潔癖
引き剥がした息継ぎを乗せて
あどけなく濁ること
噎せかえるほどの恵みでいたい
さびしさの輪郭を摘む
うつくしさよりも脆い事変
光芒でできた泥濘
白磁の心中
この頬のためにうまれた
静かに探すかたわら
スロウダンスの成れの果て
ひとかけらの標本
名も無き境をなぞっている
波打ち際から離さない
ひたすらに熱くひたむきに眩く

アブソルートとマーマレード
翳りで結んだ天国
うずもれてよだかの雨だれ
清く正しくもう還れない
あまやかな罅にあらましき星
生い茂るセレナーデ
すみやかさからは遠い融点
ともすればともし火
永遠なんかよりも奇麗だよ
リトル・ブラック・メロディー
つたない天地へ暴論の魂
わたしに偽称しない六等星
落日めいた煙を噛む
祈りと呪いのスカーレット
いつものごとくいつかの日まで
あなたの影が氷らぬよう
たったひとつのぬるい病床
裸の未来と鼻先の冠
石榴も葡萄も手をこまねいている
四つ足のサムシングブルー
原始で終着の純潔
ポルカドット・ムーンライト
もいで砕いた17回目
世界のどこにもいない前兆
一対しかないさよならがほしい


2019.10.26
Dear Steven Allan Starphase.
Love from Sugar.