しづかな夢をみているつもりで
百の色に百の花に百の獣
思い出はいつも濡れた火のように
ひずんだまばゆさにほざいている
贅沢なさびしさを嘗めて
透明も極彩もてのひらから過ぎ
鉤括弧の中のきみまだ蕾でいいよ
名もなきすべてがにおい立つ前に

くちに出せば仄かな畸形
この身に余る暮夜と花雨
光を真似てひろがる見殺しの春
あわい末尾に重ねて吐く息
ふたり剥がれ落ちないしじま
この指が綻ぶように在らずとも

かりそめの動脈を霽れと呼ぶ
ほんとうの静脈に潜んだ夜天

ストロベリー・オンザ・縺ッ縺倥a縺ヲ縺ョ諱

グッバイ・マイ・ハレーション
くちびるに永遠と不滅の違い
破ってようやく色づく小指
群青の付け入る隙を握り潰して
満ちない欠けない嘘じゃない
次はなにを忘れて生まれてこようか
凛とからはほど遠い片鱗に告ぐ
燃え盛るからぬばたまの海
わたしよりも華奢な翳りを弄ぶ
いつか砂の数さえ恣
あまったるい火にどうしようもない油
キラキラハートディストーション

降り頻る月の名
蜜だけ唾だけ愛だけ今だけ
四肢ある貪婪の讃歌
黒焦げの極楽鳥を抱きしめて
いち足すいちは終わりのはじまり

さよなら砂上楼閣

たったひとつ残響じゃなかったこと



二〇二一 夏至