宗教めいたあわいを齎して
よろこびもさびしさも鮮やかな胡乱
しとどに飛び散った心中の健気
夢と現の境目に肉を与える
莉、蜥後↓縺斐*縺
野良犬のてのひらで抱きしめた
烈々とした滅びの結び目
いとおしさは土くれとなってからが花
夏至が近くきみは離れて
月にも髪があることを知っていた
にべもなく止め処なく
白い富ばかり着せようとする
天道はまぶたを持たない
きれいな五指をもぎ砕く
汚れちまったかなしみを摘んだ
頸筋に綯い交ぜとなって溢れゆく
鍵穴がずっと游げるように
絶体と絶命のあいだに棲みつけ
破り継ぎの心臓
我らはしがない文字化けども
爛漫からほど遠い異称
擬態する横顔
海か鉛めいて離れない
めくらを模倣している
剥がれ落ちた螺鈿の箱庭
きっと百足でさえも見て見ぬふり
詠めないなにもかもを匣にした
雨後を生むが如く
ぜんぶ気持ち好いと謂う
莉、蜥後↓縺斐*縺
野ざらしのおまじない
これが愛じゃないならなんだって言うの
をとめを俟たない夜明け
ひとひらの朱殷で緩やかに撫でて
乱暴の汀で呼んでね
金襴緞子の目眩を抱きしめて
拉するように微笑んで
莉、蜥後↓縺斐*縺
流行りの不吉にくちづけて
肺腑ばかりがゆきすぎ春が嗤っている
いろはにほへとに気が触れて
後光のうちで絞め殺してほしい
残り火で引っ掻いてくれ
子どものような孤独
嘘も真もうしろ手に縛りあげた
をかしくなる頃にはお菓子もなくなる
難くなる前からおまえのもの
おれの沈黙を嬲るひと
落丁の神さま
眇めていないでわたしを見つめて


初春の令月にして、気淑く風和らぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす
令和元年吉日